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『ボブという名のストリート・キャット』刊行記念!
著者 ジェームズ・ボーエン & ボブ
スペシャルインタビュー

世界28カ国で翻訳化され、全英70万部を超えるベストセラーノンフィクション“A STREET CAT NAMED BOB”の邦訳刊行を記念し、著者のジェームズ・ボーエン(とボブ)に本作についてや、普段のふたりの生活についてお話を聞きました。

──まずはボブとの出会いを教えてください。

ジェームズ:今から7年前になるかな、ある日、アパートに帰ってきたらドアマットの上に猫がいたんだよ。僕は当時、路上演奏をやっていたから毎日出かけるんだけど、戻ってくるとまだいる。3日くらい同じ場所にいたから、てっきりそこの家の猫かと思ったんだ。でも違った。それで僕の部屋に連れていった。猫を飼うつもりはなかったけど、お腹を空かせていたからね。

──もともと猫が好きだった?

ジェームズ:大好き。だからボブを見て、すぐに惹かれたよ。目がグレーに輝いていて、なんだかとても頭がよさそうに見えた。猫は独立心が旺盛な生き物だけど、自分もそういうタイプ。それまでの僕の人生にはいろいろな問題があったけど、それでもひとりでロンドンに暮らしていたくらいだから、独立心はあった。だから通じ合う気がしたのかもしれない。

──ボブも最初からあなたのことが好きだったようですね。

ジェームズ:そうだね。動物病院に連れて行って脚の傷を治してあげたから、その恩を感じていた部分もあるだろうけど…。でも、ボブのほうも最初から僕に通じ合うものを感じていたと思う。

──それでも、すぐにボブと一緒に住もうとは考えなかったのは何故?

ジェームズ:当時、自分には猫を飼う余裕なんかないと思っていたからね。でも、外に放そうとしても僕の部屋に戻ってくる。最終的には「僕がボブを飼うことを決めた」というより、「ボブが僕を家族にすることを決めた」って気がするよ。次第に、これは運命なんだな、あらかじめこうなることに決まっていたんだなって気持ちになった。僕はカルマみたいなものを信じるタイプだから。  ボブがどうして僕のアパートに来たのかわからないけど、外に出しても「この辺は知らない場所だ」っていう反応をする。だから近所の野良猫ってわけでもなさそうなんだよね。そういう意味でも運命みたいな気がしたよ。(話を黙って聞いているボブに向かって、口笛を吹くジェームズ)

──ボブとの暮らしが始まっていちばん大きな変化は?

ジェームズ:それはやっぱり、路上演奏のときのお客さんの反応がまるで変わったこと。毎回コインをいっぱいもらって、もらうたびにボブにもキャットフードでお裾分けをした。だからボブも人がたくさん見に来てくれるのは嬉しいことだってすぐわかったみたい。  家に帰っても、それまではひとりでただ天井を見上げて過ごしていた。たまに友だちが遊びにきてくれることもあったけど、だいたいは「ひとりの人生」って感じで生きていたんだ。だけどボブと一緒に住むようになって、家に帰るのも楽しくなった。仲間ができて、人生が楽しくなったよ。

──ボブは特別な猫だと思う?

ジェームズ:ボブみたいな猫は他にいないと思う。少なくとも、僕が今までに会った猫たちとはぜんぜん違うよ。  ハイタッチをするのもそうだけど、ボブは自分から「こういう遊びをしようぜ」って言ってくるんだ。何か新しい芸をやるときも、こっちが教えるんじゃなくて、ボブのほうから「こういうことをやりたいから、お前はこうやって相手をしてくれ。それでうまくできたらご褒美をくれ」って要求してくる。ボブはこっちのことがなんでもわかっている。いま僕が動物愛護のチャリティで働いていることも、ボブはもちろんわかっていると思う。

──ボブの名前の由来は?

ジェームズ:普段のボブは機嫌がよくて、「撫でて」って甘えてくる。でもどこか野性的なところがあって、「俺がボスだぜ」っていうことを示さないと気が済まないときがあるんだ。仲良くベッドに入ってウツラウツラしているときに、急に飛びかかってきて首に噛み付いたりね。去勢してからはそういうことは減ってきたけど。そういう性格のギャップが激しいところが〈ツイン・ピークス〉に出てくるキラー・ボブというキャラクターに似ているから、ボブという名にしたんだよ。ボブ、こっち来いよ(と、ジェームスは紙をくしゃくしゃ丸めて音を立ててボブの気を引こうとするが、ボブは書棚の下に入ってしまう)。 ──本には出てこない面白いエピソードがあれば教えてください。

ジェームズ:2冊目の本「The World According to Bob」(英国で13年7月刊行)に書いたけど、最近は自転車に乗るときもボブは僕の肩に乗っかるようになったよ。それから、バスで家に帰るとき、居眠りしていて降りるバス停を通り過ぎてしまいそうになったら、ボブが起こしてくれたことがあった。僕のことを振り返って「ほら、降りるぞ。早く来いよ」って顔をしていたよ。

──ボブは不思議な力を持っている気がしますね。

ジェームズ:僕の体調がよくないとき、ボブにもそれがわかるみたい。野生の猫はケガをしたときに喉をゴロゴロ鳴らして自分を癒すと言うけど、僕に元気がないときは、ボブが近くにやってきて喉をゴロゴロ鳴らしてくれるんだ。

──ボブと出会ったことで、あなたの親子関係も変わりましたか?

ジェームズ:母は昔からバリバリ働いて成功してきた女性。そんな母にとって、僕は自慢できるところがひとつもない息子だったんだ。でもいまはボブのお蔭で立ち直ったし、本も書けたから、母も喜んでくれている。母はオーストラリアに住んでいるからボブと直接会ったことはないけど、Skypeを通してボブのことはいつも見ているよ。

──お父さんとの関係はどうですか?

ジェームズ:父はロンドンの南に住んでいる。かつては〈ビッグイシュー〉を売っている僕のことを「そんなの仕事じゃない」って認めてくれなかったし、ボブと一緒に遊びに行っても「なんで猫なんか連れてきたんだ」って咎めるような人だった。でもボブのお蔭で僕の人生が好転したことを知ると、「その猫を絶対に手放すなよ」だって。掌を返したみたいな態度で笑っちゃうよ(笑)。 父は、せっせと体を動かしてお金を稼ぐべし、という昔気質の考えだから、僕がきちんと職に就いていないことが許せなかったみたい。でも今は僕のことを誇りに思ってくれている。本が出たとき、僕らが〈ビックイシュー〉を売っていたエンジェル地区の本屋さんでイベントをやったら、大して告知もしていなかったのに200人以上の読者が来てくれた。そのことも父はすごく喜んでくれたよ。

──ボブのお気に入りを教えてください。

ジェームズ:とにかく遊びが好きだね。投げたものを取ってくることもできるよ。

──まるで犬みたいですね。

ジェームズ:いやいや、犬よりよっぽど賢いよ(笑)。羽根のついたおもちゃで遊ぶと、野生の顔をして真剣に飛びついてくる。 それから意外と服を着るのも好きみたいだ。服を着せられても嫌がる素振りはまったく見せない。むしろ「俺は特別な猫。ほかの奴らとは違うんだ」って顔をしている。いまやマフラーだけで300本も持っているよ。本人はどれが気に入っているのかな? 〈ハリー・ポッター〉みたいな縞模様のマフラーも好きみたいだね。

──ロンドンでボブが好きな場所はどこ?

ジェームズ:コヴェントガーデンに行くと、みんなが「いい猫ね」って褒めてくれたり、写真を撮らせてほしいと寄ってくるから、ボブにとってはお気に入りの場所。ボブは人に褒められると「ありがとう」って顔をして嬉しそうにしているよ。

──ボブはどこで寝ているの?

ジェームズ:夏は僕の足元、冬は首の周りのあったかい場所で寝ている。欲しいものがあると、左右の脚を交互に出して、肉球でもみもみしてくる。猫を飼っている人なら、わかるでしょ?

──いまの仕事について教えてください。

ジェームズ:新しい本を書いたり、そのプロモーションのためにテレビに出たり、ボブと一緒に動物愛護のチャリティに参加して寄付を募ったりもしている。ボブのお蔭で僕の人生はものすごく輝いた。その幸運を独り占めしないで、できるだけ多くの人に分けたいと思っているんだ。ボブをテーマにした映画やゲームも作れたらいいな。

──本の執筆で苦労したことは?

ジェームズ:ドラッグ中毒だったことや家族との関係など、つらかった日々を掘り下げていく作業が苦しかった。でも実際にやってみると、本を書くことが自分にとってのセラピーになったと思う。過去が整理できて心が軽くなったよ。本を書くのは初めてだったからまとめるのは大変だったけど、構成を手伝ってくれたライターさんにいろいろと助けてもらってどうにか書き上げた。

──この本を通して、読者に伝えたいことは?

ジェームズ:「誰でも、どんなところからでも、立ち直ることができる」ということ。困ったときに助けてくれる人がいれば素晴らしい。でも、たとえひとりでも、どんな状況からでも立ち直れるんだってことを伝えたい。  あと、路上演奏をしている人や〈ビッグイシュー〉を売っている人を見ても偏見を持たないでほしい。「好きでホームレスみたいな暮らしをしているんでしょ」とか「自業自得だね」って思う人も多いだろうけど、それぞれにいろんな事情を抱えている。それを少しでもわかってほしいと思う。(ボブが書棚の下から顔を出す)やあ、ボブ。

──家は引っ越したのですか?

ジェームズ:いや、変わっていないよ。あのアパートはボブと出会った場所だし、今ではいい思い出ばかりだから、そのまま住んでいる。中心部からはちょっと離れているから、相変わらずローカルなバスにも乗っているよ。ま、最近は見知らぬ人からも「あっ、ボブだ!」って言われてしまうから、昔みたいに気楽には乗れなくなっているけれど。

──ボブとの出会いにはどういう意味があったんだと思いますか?

ジェームズ:自分が変わらなきゃいけない、強くならなきゃいけない時期だったのだと思う。「ボブのために変わりたい」って思えたことがいちばん大きかった。その後、本が出版されたことで、人との関係性ができて、いまやっている仕事にも出会えた。ほんとうに大きな出会いだったよ。ほら、ボブ、おいで(ボブ、ジェームズのかたわらにやってくる)。

──最後に、日本の読者にメッセージをお願いします。

ジェームズ:コンニチワ! ……あぁ、言いたいことはたくさんあるけれど、すぐに浮かばない(笑)。本を見てボブと僕の物語を楽しんでください!

(取材・撮影:平川さやか / 構成:金井真紀)

『ボブがくれた世界 ぼくらの小さな冒険』刊行記念!
ボブ&ジェームズ スペシャルインタビュー第2弾!

全英100万部超えとなったベストセラー『ボブという名のストリート・キャット(原題:A Street Cat Named Bob)』から約一年。
その後のジェームズとボブの暮らしを綴った続編『The World According to Bob(ボブがくれた世界)』が刊行となりました。
約一年ぶりにふたりを訪ね、新作のお話や、近況を聞きました。

──最近のボブの得意技は何ですか?

ジェームズ:最新作の中にも出てくるけど、「長ぐつをはいた猫」という芸みたいなのがあって、それが最近のボブの得意技だね。映画『シュレック』にプスというキャラクターがいるんだ。かわいいフリをして人を騙す茶トラ猫。何かをせがむとき、ボブは後ろ足で立ち上がって、すごくかわいい顔をする。もうごはんをあげたのに「もう少しちょうだい」って言う時や、遊んでほしい時なんか。まさに「長ぐつをはいた猫」そのもの。その姿を見ると、もうボブの言いなりになるしかないって気持ちになるよ。

──ボブとコミュニケーションをとる方法は何ですか?

ジェームズ:表情とか仕草を見ると、ボブの気持ちは大体わかる。ボブはほんとうに表情豊かな猫だから。 たとえば朝、ぼくが寝ているところへ来て、軽い感じで「ニャオ」って言うんだけど、それは「おはよう」の意味。トイレに行きたいときは「すごくトイレにいきたい!」って顔をするからすぐわかるよ。 怖い人や嫌いな人が近づいてきたときは、ぼくのほうをチラチラ見て、体を寄せてくるのがサインだね。そういうときボブは、ただ怖がるんじゃなくて、ぼくのことを守ろうとしているのがわかる。人間より小さな存在だなんて自覚はまったくなく、悪い人間からぼくを遠ざけようとして、唸り声を出すんだ。ボブはびっくりするほど勇敢な猫だよ。

──ふたりの遊び方を教えてください

ジェームズ:遊んでほしいとき、ボブは体を寄せて来て、ぼくの膝をポンポンッて前足で叩く。ぼくがゲームをしているときなんかもよく「ゲームなんてやめて、遊ぼうよ」って言ってくる。 ぼくがおもちゃを投げてボブが拾ってくるという普通の遊び方もあるけど、その逆がまた楽しいんだ。ボブがおもちゃを蹴って遠くへ飛ばし、それをぼくが取りに行く。あとは部屋中をやみくもに走り回るという遊びもある。そういうときのボブは大はしゃぎしているね。最近ふたりのあいだで流行っている遊びは、エアダスター。ゲーム機にボブのオレンジの毛が詰まっていたから、スプレー式のエアダスターでシューッと掃除したら、ボブがその音にびっくりして飛び上がったんだ。ゲーム機に何かあったのかと思ったらしくて、しばらく様子をうかがっていた。その仕草が本当に面白くて、かわいかった。だからぼくはまたボブをエアダスターで驚かせようとするんだけど、ボブは「君の狙いはわかってるぞ。もう引っかからないぞ」って顔をするね。

──ボブのお気に入りグッズは何ですか?

ジェームズ:前回のインタビューでも話したかな?お気に入りのネズミのぬいぐるみがあって、ボブはとにかくそれが大好きだった。さすがにボロボロになったから引退させたけど。 そうそう、そのネズミでおかしなことがあったんだ。ネズミのお腹のところに穴が空いていたんだけど、あるとき飛んでいる蛾に向かってボブがネズミを放り投げた。そしたら、スポッてその穴に蛾が入ったんだよ。すごいミラクルだった。もちろんボブは狙ってやったんだと思う。 あとお気に入りなのは、手袋。去年の冬のあいだ、読者からもらった手編みの手袋をずっとしていた。とてもかわいかったよ。

──ボブとの暮らしは変わりましたか?

ジェームズ:ボブと暮らし始めて、家の中はきれいになったよ。ひとり暮らしの頃は、いろんなものを集めていた。拾って来た看板やマネキンや妙なガラクタがたくさんあったんだ。当時は古い家具をもらってきて使っていたけど、最近新しい家具が揃えられるようになった。その機会に変なものはぜんぶ捨てたよ。その代わり、街の人や読者からもらうボブのセーターやマフラーが増えたかな。 07年にボブと出会って、10年に本が出て、ほんとうに激動の数年間だった。生活も気持ちもいい方に変わったよ。 でもボブとの関係は変わらない。ボブはいつも神がかっていて、愛すべき存在で、とても忠実な相棒。ボブにとってはぼくの存在がすべてで、ぼくにとってはボブの存在がすべて。そこは揺るがない。

──ボブは何をしている時間が好きですか?

ジェームズ:バスや電車に乗ると大喜びするね。猫は普通、自分のテリトリー以外は好きじゃないけど、ボブは世界のすべてが自分のテリトリーだと思っているんじゃないかな。本のサイン会のためにマンチェスターやリバプールといった地方都市に行く機会があったけど、そういうときもボブは電車の窓から熱心に外を見ていた。田舎の風景も好きだけど、都会に戻って来て人の往来が見えると「よしよし。人間どもが動いているな」みたいに満足げな顔をしている。

──ボブに怒ったことはありますか?

ジェームズ:ボブに腹を立てたことは一度もない。入ってはいけないところに入ったり、いたずらで物を落として壊したり、人間用のサンドイッチのハムとチーズだけ食べちゃったりすると「ダメ」とは言うけど…。 戸棚に入っているキャットフードを食べようとするから、チャイルドロックをするようにしたんだけど、お腹がすくとそれをガチャガチャと揺するんだ。その音が本当にうるさくて「あー!うるさい!」って文句を言うけどね。本気では怒らないよ。

──猫と仲良くする方法を教えてください

ジェームズ:猫は、よく見るといろんなサインを出しているから、それを見極めることだね。 愛を持って接すれば、猫も必ず愛を返してくれると思う。

──猫全般が好きですか?

ジェームズ:犬は忠実な動物で、猫はかしこい動物だと思っている。猫は目の後ろあたりでいろんなことを企んで生きているように感じる。そういうところが好き。 あ、でもこのあいだロンドン動物園でトラを見たら、トラもいいなぁと思ったよ。トラは一緒には暮らせないけどね。

──影響を受けた本や音楽を教えてください

ジェームズ:影響を受けたものは選べないくらいあるけど…。作家だったらスティーブン・キング、ジョージ・オーウェル、ウィリアム・バロウズ。音楽はジョニー・キャッシュとかナイン・インチ・ネイルズとか…。ぼく自身もギタリストだから、ギターの曲が好きかな。ブラーとかオアシスにもいくつか好きな曲はあるけど、全部が好きというわけではない。たまにビートルズも聞くよ。だから「あのバンドが好き」というのは特にないかな。

──前作『ボブという名のストリート・キャット』は日本でもとても大きな反響がありました。読者からの質問が届いているので聞いてください

① セカンドチャンスをつかめずにいる 現在、無職。病気もあり、家族もいない。前向きに生きなきゃと思いながら、ついついネガティブな考えに陥ってしまう。こういう時期をどう乗り越えたらいいか、アドバイスをください。 (40代、女性)

ジェームズ:うーん…。(答えに窮してしまうジェームズ。その様子を心配してボブが隣りにやってくる。ボブを撫で、言葉を選びながら…)明るい状況にいなくても「毎日を生きる」ということを続けるべきだと思う。一日、一日を楽しく生きる。それをがんばるしかない。 誰にでも自分の人生や、大切な人の人生が思い通りにいかない時期がある。でもいつも世界は楽しいものだということを忘れないようにしたいと思っている。

② 親との距離に悩んでいる ずっと親と折り合いが悪く、避けてきました。でもジェームズとボブの本を読んで、自分もいつかきっかけがあれば歩み寄りたいと思うようになった。背中を押す言葉をください。 (20代、男性)

ジェームズ:親との関係はむずかしいね。こじれてしまった場合、なるべく「中間地点」、つまりお互いに折り合いをつける地点を見つけることが大事だと思う。でもこれは、ひとりでは解決できないことだよね。自分の気持ちと相手の気持ちの両方が歩み寄らないとうまくいかない。だから時間がかかるかもしれない。親が育ててくれた恩は忘れず、時期を待つしかないと思う。ぼくも親といい関係になれるまでに10年かかったよ。

③ 最愛の猫との別れをどう受けとめたらいいか 自分にとって猫が唯一の友だちでパートナーです。猫が先に逝くことはわかっているけど、考えただけで恐ろしい。ジェームズもそういうことを考えることがありますか? (30代、男性)

ジェームズ:うん…。ツイッターでも「わたしの猫が死んでしまった」って打ち明けられることがよくあるんだ。ぼくはこう考えている。猫は死んでも自分のなかに残る。猫と過ごした時間は自分の一部としてずっと残っていく。そして猫も大事にされたことはわかっている。ふたりがいっしょにいた思い出を大切にしてほしい。

──人生で大事にしていることは何ですか?

ジェームズ:「自分の人生を自分で決める」ということかな。自分が正しいことをやっていれば、必ず宇宙がそれに答えてくれると思う。ぼくは宗教とか政治とは距離を置こうと思っているから、これは宗教的な意味で言っているわけではないけれど。 ボブに会う前のぼくの人生はとても生きづらいものだったし、きっとボブもボクに会うまではたいへんだったと思う。でもふたりは出会って、いまはよりよい場所にいる。だからきっと誰の人生にも突然すばらしくなる可能性はあるはず。

ボブはぼくにインスピレーションを与えてくれる神様みたいな存在。言わばミューズだね。もしかしたら人生は、ミューズを見つければ開ける仕組みなのかもしれない。ボブは世界とぼくをつないでくれる。会えてよかったなぁといつも思っている。ボブに会ってからは毎日がすばらしい旅だよ。

──最近の仕事は何ですか?

ジェームズ:今は基本的にはチャリティの仕事をしている。ホームレスチャリティとアニマルチャリティに関わっている。ぼくとボブの仕事は、イベントでスピーチをしたりメディアで動物虐待への反対を訴えたりすること。 虐待に遭っている動物のことを思うと、怒りを感じるよ。人を殴ったら刑務所に入らなければいけないのに、動物を殴ってもとがめられないなんて許せない。動物は喋れないから、それを代弁してあげないといけないよね。 ボブに関する本も書いていて、もうすぐ子ども用の絵本が出版されるんだ。ぼくに会う前のボブの前半生を想像して書いた物語だよ。 (『My name is Bob』イギリスでは2014年5月に刊行)

──今後のプランを教えてください

ジェームズ:もっと本を書きたいし、動物虐待に対する運動もやっていきたい。もっとメッセージを伝えたいと思っています。 あと、ロンドン郊外に引っ越そうかと考えているんだ。ボブが車にひかれる心配が少ない静かな場所でいっしょに暮らせたらいいなと思って。それが今後の楽しみだね。

いつかボブといっしょに日本にも行けたらいいなぁ。京都に行ってみたい。もちろん東京にもね。

(取材・撮影:平川さやか / 構成:金井真紀)

映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」
日本公開記念
ボブ&ジェームズ スペシャルインタビュー第3弾!

世界中が感動した奇跡の実話がついに映画化。
日本での映画公開決定のニュースを受け、ロンドンに暮らすジェームズとボブを直撃!
映画撮影の裏話から、二人の近況などをうかがいました

──映画化のお話を聞いたときの気持ちは?

ジェームズ:2015年の終わり頃、プロデューサーのアダム(Adam Rolston)と映画化についてのミーティングがあったんだ。彼はかなりやる気で、「来週から試作を始めるつもりだ」って言うから、僕は「ワーォ! 本当か?!」と、とにかく驚いて……本を出版して3年半くらいしか経っていなかったから、結構クレイジーなスピードだよね。でも、この作品に情熱をかけてくれているのがよくわかったんだ。  それからすぐに、今度は僕の役を演じてくれた俳優のルーク(Luke Treadaway)が「会おうよ」と連絡をくれたんだ。ルークは僕に、僕がいつもバスキングしていた場所に連れて行ってくれと頼んできた。僕とルークは二人でバスキングしていた場所に行って、そこで演奏したんだ。地下鉄の入口でもやったし、パブでやって小銭をもらいに回ったりもしたよ。ルークは実際に野宿だってしたんだよ。街の中では人がどれだけ僕らを無視して通り過ぎるかということを、実際に体験した。僕の生活を体験することが、彼の役作りになったみたいだね。ルークのその姿を見て、この役をとても大切に考えてくれていることが伝わってきたよ。  でもとにかく、あまりに速いスピードで映画化の話が進んでいくことに、とても驚いたというのが正直なところだったね。

──映画にはボブも本人役で出演しているそうですね。

ジェームズ:そうだよ。だけど最初はボブが出演する予定はなくて、カナダから連れてきていたスタントキャットたちが演じる予定だったんだ。ある日、コベントガーデンで撮影をしたときのことなんだけど、ボブ役の猫たちが街の人ごみに慣れていなくて撮影が難航したことがあったんだ。でもボブは慣れているからね。街中でも大人しく座っていたんだよ。気楽にね。そしてときどき通りすがりに誰かがお金を置いていったりするだろ、そうするとボブはその人の顔をじっと見るんだ。「ありがとう」って言っているみたいにね。  そんな様子を見ていた監督のロジャー(Roger Spottiswoode)が本当にびっくりしてね。アダムも「ボブを使うべきだろうな」って言ったんだ。それで予定にはなかったけど、ボブが自分役で出演することに決まったんだよ。

──撮影現場の雰囲気はどうでしたか?

ジェームズ:ほとんど毎日撮影に立ち会ったんだけど、とてもいい雰囲気だったよ。トゥイッケナムにあるスタジオで撮影したんだけど、ボブがいることで、撮影クルーにとっても、励みになったみたいだった。ボブがいることでチームが一つになっている感覚があったし、みんながボブに声を掛けて可愛がってくれていたね。ディレクターはボブの大好物のクリームチーズをくれたりしてさ。

──ボブの役者ぶりは?

ジェームズ:素晴らしかったよ。何しろ自分で主役の座を勝ち取ったんだからね。例えば、立ち位置にマークをしておいて、セットチェンジするときがあるだろ、するとボブはそこにずっと座っているんだ。周りがどんなにガヤガヤ物を動かしたりしていても気にしないで、自分のポーズのまま待っているんだよ。照明が当たっても全然平気だし、むしろ大好きだったね。コベントガーデンでのシーンはボブの得意なシーンだったし、ルークと一緒のシーンもボブにとってはやりやすいみたいだったよ。二人は心を通わせていたからね。

──好きなシーンはありますか?

ジェームズ:ルークとボブのシーンはどれも好きだな。ボブは僕とするようなことを全部ルークとやってくれた。肩の上にのったり、ギターの近くに座ったり。二人のシーンを見ていると心温まるものがあったし、すごく胸を打たれたよ。

──完成した作品を観た感想を聞かせて下さい。

ジェームズ:僕自身のストーリーなんだけど、まるで全く新しいものを観るような気持ちだったかな。僕の本があって、映画の脚本ができて、監督や役者がいて……映画が作り上げられていく瞬間を間近で見ていたにもかかわらずだよ。でも、とても本質をついた、素晴らしい映画になっていると思ったよ。

──ご家族や周囲の感想は?

ジェームズ:父はすごく喜んでいたし、僕を誇りに思うと言ってくれた。家族もみんな喜んでるよ。あと、2017年ナショナルフィルムアワーズUKの【最優秀英国作品賞】を受賞できたことは嬉しいニュースだったね。

──最近の二人の生活についても教えていただけますか。

ジェームズ:南ロンドンに引っ越したところなんだけど、周りは緑に溢れていて、ボブも喜んでいるよ。散歩を楽しんだり、週末は一緒にパブに行ったり。父も近くに住んでいるから、時々一緒に過ごしているよ。そうそう、最近、1歳くらいになる子猫を保護したんだ。喧嘩っ早い性格だけど、ボブの良い遊び友だちになっているよ。

──最後に、いよいよ日本でも映画が公開されます。映画を心待ちにしている日本の皆さんにメッセージをお願いします。

ジェームズ:ボブの素晴らしい役者ぶりをぜひ見て欲しいです。猫の不思議な大冒険が楽しめると思います。ぜひ映画をご覧になってください!  それから、映画のプロモーションで日本に行くことが決まりました。日本の皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

インタビューの後、ジェームズはボブをいつものように肩にのせて、映画のロケ地になった運河を案内してくれました。有名人の二人がロンドンの街を歩くと、あっという間に人だかりができる。映画の感想や、役者ボブへの労いの言葉などが飛び交っていました。パトロール中の警察官までもがボブとの2ショット撮影をリクエストするワンシーンも。相変わらずばっちりカメラ目線をくれるボブに、取材クルーもメロメロになったのでした。

(取材・撮影:平川さやか/構成:小泉宏美)